2008年8月2日土曜日

園原市街⑥


 如月十郎は巨体を屈め、スイングドアを細く開けて客席をのぞいた。
 しばらくそうしていた。
「マズいっしょあれ。安井医院に電話しといた方がいいすかね」
 新見が恐る恐るささやくと、
「要らねえよ」
 如月十郎がのっそりと振り返った。
 やってられんとでも言いたげに鼻で笑った。首の関節をごきりと鳴らす。
 つぶやいた。
「うちもナメられたもんだな」
安井さん

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